1 野洲市訪問
当会議では、「ようこそ滞納いただきました」で有名な、滋賀県野洲市の状況を調査しました。前年に調査、申入れをした前橋市などでは、膨れる税滞納を解消するために、強硬的な取立を行うようになったわけですが、これとは対照的であるため、逆にそのような姿勢でどのようにして自治体の運営を行っているのかが不思議でなりませんでした。当会議での位置づけは、「北風と太陽」の寓話で言うと、前橋市は「北風」、野洲市は「太陽」ということとなります。
平成30年1月12日、全国各地より、税理士、弁護士、司法書士をはじめ、被害者の会などから総勢21名が集まり、野洲市長にもご出席いただき、野洲市の税滞納対策について懇談しました。
ここで分かったことは、野洲市においては、税滞納を生活困窮のシグナルとして捉え、その税滞納者の生活の再建を行うことにより、再び自主的に納税できるよう立ち直らせているということでした。まさに、前橋市とは対照的でした。
前橋市のように、広範な調査権に基づき税滞納者の財産を調べ上げ、問答無用で差押をするといった徴収方法は、確かに一時的には徴税効果が上がります。しかし、その結果としては、生活が徹底的に破綻させられてしまい、立ち直るきっかけを完全に失ってしまうばかりではなく、行政に対して不信感を植え付けることとなってしまい、悪循環を生み出すこととなってしまいます。
これに対し、野洲市の手法は、短期的に徴税効果が上がるという効果は望めませんが、税滞納者の生活の再建を行うことにより、税滞納の原因を取り除き、自主的に納税ができるようにするというのですから、長期的には徴税効果が上がる仕組みだと思われます。なによりも、生活再建に尽力するのですから、行政に対する信頼は増すこととなります。
したがって、地方自治の本旨の見地から見ても、野洲市の手法こそがあるべきものかと思いました。そして、全国会議では、野洲市の手法を各地に広めていくという方針をとることとなりました。
2 さいたま市の実情
全国会議が、上記の活動方針をとることを決めた矢先に、信じられない報告がさいたま市の税滞納者支援団体より寄せられました。さいたま市では、税滞納者に対し、ヤミ金から借りてでも納税しろなどと迫り、自殺者まで出ているというのです。
いくら何でも、自治体が貸金業者でもやらないような取立を行っているということはないはずであり、かなり誇張された話だとは思いましたが、火のない所に煙は立たないことから、全国会議では、念のためさいたま市の状況を確認してみることとしました。
しかし、真実は小説より奇なりでした。さいたま市の債権回収課に寄せられた市民からの苦情につき、埼玉県の市民団体が情報公開により取得した資料によると、繰り返し「債権回収課にやくざみたいな人がいます」「ヤクザのような取り立て」「口のきき方を教育して下さい」「担当者の教育を切に願います」「態度が悪い」「高飛車」「高圧的」「強圧的」「恫喝」などといった苦情が寄せられており、ひどい内容では「愚民ども」などと職員が述べたり、挙げ句の果てには、「自己破産して借金ができない?闇金なら貸してくれる。闇金なら返さなくていいんだから闇金から借りて一括納付するように。」と要求されたりした案件があることが判明しました。
また、支援団体から聞き取りを行ったところ、さいたま市では税滞納が引き金となって自殺をした方が、少なくとも3名はいるということも把握するに至りました。
全国会議としては、前橋市を上回る悪質な自治体は想定していなかったのですが、このような事実を突きつけられた以上、改善を要請しないわけにはいかないものと判断し、さいたま市でのシンポジウムと、同市に対する改善の申入れを行うこととしました。
3 さいたま市でのシンポジウムと申入れ
平成30年7月8日に開催されたさいたま市でのシンポジウムでは、さいたま市社会保障推進協議会より、滞納税金の強圧的な取立により自殺に追いやられた事案の報告に続き、埼玉の小林哲彦弁護士より、超過差押の承諾書に基づく給料の差押事案が報告されました。この事案は、月収35万円の税滞納者が、さいたま市に対し、月32万円の超過執行の承諾書を差し入れさせられたことにより、給料の内32万円が差し押さえられてしまったという事案について報告されました。さいたま市は、この税滞納者はどうやって生活を維持すると考えていたのでしょうか。この事案については、裁判所により執行停止の命令が下されていますが、さいたま市の実態を垣間見る事案でした。
次いで、被害救済の実態として、前橋市と闘っている群馬の吉野晶弁護士から、給料振込口座の差押を違法と判断した、前橋地裁平成30年1月31日判決(確定)と、年金振込口座の差押を違法と判断した、前橋地裁平成30年2月28日判決(控訴審で逆転敗訴)の報告がなされました。児童手当の送金口座を差し押さえたことを違法と判断した広島高裁松江支部平成25年11月27日判決に引き続き、各地で送金口座の差押を違法と判断する判決が相次いでいることが分かりました。
このような結果を受けて、翌9日、さいたま市の債権回収課に対し、節度を持った滞納処分を求める申入れを行いました。実は、さいたま市に申入れをお願いした当初は、申入れを面会して行うことについては拒絶をされました。その理由としては、シンポジウムのチラシに「愚民ども」「ヤミ金から借りて払え!」などの文言があったことから、全国会議は偏向的な団体だと判断したからだそうです。これに対しては、情報公開によって得られた内容をそのまま記載したものであることを懇切丁寧に説明し、なんとか面会による申入れを受け入れてもらえました。
申入れは、全国会議のメンバーに加え、地元支援団体や地元議員など、総勢14名で行われました。さいたま市は、苦情件数は減少傾向にあることなどを説明していましたが、全国会議からは、言語道断の対応なのだから0件でなければならないことなどを訴えました。
議論の末、全国会議では、今後もさいたま市の動向は注視していることを告げて、申入れを終えました。
4 その他の活動
その他の活動内容は、添付の活動報告をご覧下さい。
今年度は、平成30年8月24日及び25日に開催された、生活保護問題議員研修会において、滞納処分問題につき分科会を担当しました。議員からは、各地の実情等が語られるなど、活発な議論がなされました。
また、土建組合を中心として、全労連、年金者組合、全商連、税理士団体、国公労連をはじめとした、21団体が結集して、平成31年1月12日及び13日に開催された、「いのちとくらしを守る税研集会」において、当会議は分科会を担当しました。ここでも、各地の切実な実情が語られ、納税者の権利の確立の必要性が訴えられました。
その他、滞納処分問題につき、各地での講義、講演も担当してきました。必要であれば、ご連絡いただければと思います。
5 今後の活動方針
全国会議では、野洲市方式を広めていく方針ですが、前橋市やさいたま市のような、これとは真逆の悪質な対応をしている自治体において集会を開催し、その上で当該自治体に改善を申し入れるという活動をしていきます。
そのためにも、全国各地の滞納税金問題を扱う税理士、弁護士、司法書士及び支援団体と連携をする必要がありますし、なによりも、この問題に関心を持っていただくことが必要不可欠です。是非、みなさまにも、この活動に参加していただき、運動を盛り上げて行ければと思います。
