滞納処分対策全国会議 事務局長
弁護士 佐藤 靖祥
1 リモート会議一辺倒からの脱却
新型コロナウイルスによる行動規制を契機に、当会議事務局会議もweb会議二より開催してきました。web会議は、移動することなく打合ができるということから、事務局メンバー(神奈川、宮城、群馬)は、その便利さから、行動規制がなくなった後もweb会議による事務局会議を継続してきました。
しかし、直接顔を合わせた打合ではないため、議論が充実していないように感じることがありました。例えば、以下で述べるとおり、今年度は、国税庁との協議のための議論を重ねてきたのですが、発案から協議事項の確定までおよそ8ヶ月がかかりました。
また、これも以下で述べますが、現在は、Q&Aの改訂作業も行っており、このような調子でウェブ上での議論を進めていると、いつまでたっても改訂できないおそれがありました。
このような状況を打破することを目的として、令和7年4月22日の事務局会議からは、ひとまずQ&Aの改訂作業が完了するまでの間は、新橋の貸し会議室を利用しての面談型の事務局会議をすることとなりました。
実際に、顔を合わせて議論をすると、非常に議論に厚みが出て、毎回利用時間ギリギリまで議論を重ねることができています。
Q&Aの改訂作業が終わっても、リモート一辺倒ではなく、定期的に面談型の事務局会議も取り入れていこうと考えています。
2 総会と滞納相談センターとの意見交換会
令和6年7月20日に、虎ノ門第一法規ビル6階会議室をお借りして、当会議の総会を開催しました。
総会に引き続いて、滞納相談センターのメンバーとの意見交換会を行いました。滞納相談センターは、税理士の有志が、全国からの税滞納問題に関する相談を受け付け、その解決を支援するという活動を10年間にわたって続けてきたものの、令和6年6月3日をもって相談活動を停止した団体です。
当日は、当会議からは3名、滞納相談センターからは7名が参加しました。
意見交換会においては、税滞納相談及びこれを支援する場合の苦労が浮き彫りになりました。
すなわち、滞納相談センターには、生活や事業に最も大きな影響を及ぼす給与または売掛金の差押事案の相談が数多く寄せられたそうです。このような生命線というべき債権を、既に差し押さえられた段階での相談となるので、巻き返しが、事実上かなり難しい相談となります。
いきなり差し押さえされることは法的には予定されていないので、それ以前に督促等がなされているにもかかわらず、これを放置し、その結果給料や売掛金を差し押さえられてようやく相談という事案については、私自身も経験がありますが、なぜ督促等がなされている段階で相談に来てくれなかったのかと思うところがあり、滞納相談センターの方々も、同様の苦労をされてきたのだということが分かりました。やはり、税滞納者には納税に対する誠実さ、少なくとも、督促に対して無視や放置をしないという態度が求められているということを痛感させられました。
滞納相談センターでは、このように、既に差押えがなされた、解決に向けての道筋を立てること自体が難しい案件を、全国から受け付けていたため、マンパワーが不足し、10年にわたる相談活動を停止せざるを得なくなったとのことでした。
今後は、有志税理士によるボランティアによる解決に頼るのではなく、公的な相談機関、納税に関する仲裁機関などが必要であるものと痛感させられました。
また、併せて、税滞納を生活困窮の徴表と捉えて、納税できる市民の育成をしていく滋賀県野洲市の取り組みや、生活困窮者の相談を受け付ける団体に外部委託して生活再建をしつつ税滞納の解消を行う支援をする宮城県多賀城市の取り組みなどを、各地に広めていくような、抜本的な改革を目指す運動をしていく必要もあろうかと思います。
当会議においては、このような制度作りを全国で広げられるような活動をしていかなければなりません。みなさまと一緒に、運動を盛り上げて行ければと思いますので、引き続き当会議の活動へのご協力のほどよろしくお願いいたします。
3 国税庁及び総務省との協議
当会議においては、設立当初から、破産法において租税債権が非免責債権とされていることについて、「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」という破産法の目的(破産法1条)に照らすと矛盾するのではないかとの指摘を行ってきました。
破産手続を完了した債務者は、差押えをすることのできる財産を保有していないことが通例ですから、滞納処分の停止(国税徴収法153条1項1号、地方税法15条の7第1項1号)などを活用して、生活状況が当面変わりそうにない場合には、その納税義務を免除することにより、当該税滞納者の生活再建の一助とすることは可能です。
また、主に地方税に関してですが、換価の猶予等においては、担保を徴することのできない事情があれば、担保を立てさせることなく猶予を適用することができるものとされていますが(地方税法16条1項)、担保がなければ猶予はできないなどと指摘されることも少なからずあります。同様の規定のある国税(国税通則法46条5項)においては、かかる運用がなされているか否かを確認することにより、地方税によるかかる対応の適否が判断できるものと考えました。
当会議においては、これまでも2回にわたり国税庁と協議の機会を持ってきましたので、改めて、これら各種制度の実務上の運用について確認しておきたい点を国税庁に確認する機会を持ちたいと考えました。
そこで、事務局会議にて議論を重ね、以下の6項目を国税庁に確認しようということとなり、当会議会員であり、田村智子議員の秘書を務めている村高芳樹氏のお力を借りて、国税庁との協議を行うこととなりました。
- 給料等の差押禁止額と生活保護基準(滞納処分停止の基準)との関係
- 破産手続完了後の滞納処分の停止の適用状況
- 継続債権の差押における延滞税の充足免除の起算点
- 立担保の例外の運用状況
- 換価の猶予における「納税についての誠実な意思」の解釈、運用
- 抜け駆け的な差押えをすることの可否
当初は、国税庁の運用を確認するつもりでしたが、村高会員より、地方税の問題であるならば総務省にも来て説明してもらおうというご提案をいただき、最終的には、国税庁、総務省及び財務省を交えての協議が、令和7年5月30日午後3時より、衆議院第二議員会館第五面談室において開催されました。参加者は、国税庁より2名、総務省及び財務省からは各1名にお越しいただき、当会議からは、角谷代表、小倉会員及び私の3名が参加しました。
協議の概要については、添付の「徴収実務上生じる様々な事象について如何に考えるべきか、意見交換会実施についての申入れ」の通りとなりますのでそちらをご確認ください。
感想としては、国税庁は、様々な制度について深く検討している様子が見受けられるのに対し(ただし、検討の結果については疑問のある事項もありました)、地方税に関しては、人事異動があることに加え、各種制度についての研修の体制自体が不十分であることから、徴収のための具体的な方策の検討に終始してしまっているように感じられました。
協議の際にも、当会議からも指摘しましたが、徴収の現場においては、職員には広範な調査権と自力執行権という、極めて強力な権限が付与されているので、これを徴収のためだけに使ってしまったのであれば、税滞納者の生活が破壊されてしまうおそれが高まります。
広範な調査権については、徴収だけではなく、税滞納者の生活実態の把握にも向けた上で、やむにやまれぬ場合に自力執行権を行使するという運用がとられなければなりません。国税庁は、それに沿った回答を明言していましたので、地方税においても同様の取扱がなされるよう、総務省には周知徹底を図っていただくよう、強くお願いした次第です。
今回の協議は、実務上の運用について、国税庁及び総務省から回答を得ることができ、また、総務省に対しては、実務上の問題点を各自治体に周知するよう強く求めることができ、総務省からもこれに対応する旨の回答を得られたので、非常に意義深い協議であったものと思いました。
4 今後に向けて
今後は、原点に戻って、各地での悪質滞納処分事案について情報を収集の上、当該自治体への改善申し入れをしたいと考えています。また、自営業者に対する社会保険料の滞納処分が厳しいとの話もありますので、その調査を行いたいと考えています。これらの発見は、会員のみなさまからの情報提供が必要不可欠ですので、過酷な滞納処分の事例があれば、メーリングリストなどでご報告いただければ幸いです。
また、現在、事務局メンバーを中心に「増補改訂版 滞納処分対策Q&A」の改訂作業を行っています。こちらについては、新たに、弁護士による滞納処分マニュアルを作成の上、実例に沿ってどのような制度の適用を求めるのかについて解説も加える予定です。突貫工事で作業中ですので、なんとか年内にはみなさまのお手元にお届けしたいと考えています。
このように、当会議は引き続き様々な情報発信、情報交流を図っていきますので、引き続きみなさまのご協力をいただきますようお願いいたします。
以 上