令和元年 滞納処分対策全国会議活動報告

目次

1 多賀城市調査

平成31年1月8日、宮城県地方税滞納整理機構が、税滞納者の口座に給料が入金された直後に、口座残高全額の差押をしたという案件につき、仙台地方裁判所に国家賠償請求訴訟が提起されました。

これに関する一連の報道の中で、地元紙に、宮城県では、多数の市町村では滞納整理機構による強引な徴税を行う一方で、滞納整理機構に加入していない多賀城市では、生活困窮者を支援する民間団体のスタッフが常駐し、税滞納者に対しては納税できる市民に育て上げるという支援が行われていることが報道されました。

そこで、全国会議では、平成31年4月11日、具体的にどのような仕組みになっているのか、多賀城市に確認をしに行きました。参加者は、地元社保協を筆頭に、多賀城市で法律事務所を開設している弁護士などであり、税滞納者を支援する関係者の関心の高さがうかがえました。

多賀城市によると、生活困窮者自立支援法に基づいた支援として、実績のあるパーソナルサポートセンターに外部委託をして、多賀城市役所内にて常駐のスタッフを置くこととしたそうです。庁内か庁外かについては議論が分かれたそうですが、ワンストップサービスの提供の観点から、庁内に常駐をしてもらうこととしたそうです。

この制度の利点については、生活困窮者の支援といっても、異動のある自治体職員では十分なノウハウがないところ、専門のスタッフが生活困窮者に寄り添って、一つ一つの問題を解決していくこととなるので、各部署は相談対応ではなく、専門スタッフがとりまとめた情報をベースに対応をしていくことができることとなり、行政が円滑に進んで行っているとのことでした。自治体職員にも、得手不得手があることを考えると、むしろ、このような専門スタッフが相談の受け皿になるというのは、行政職員の負担軽減にもつながることがよく分かりました。

また、滞納税金がある場合の処理について確認をしてみると、専門スタッフが生活状況を聞き取っている内に、滞納税金があることが判明した場合には、専門スタッフが丁寧に家計状況を聴取して、収納課に同行して納税方法について協議をするそうです。このときに、収納課は、専門スタッフが聞き取った生活状況を尊重して、可能な限りでの納付をすることに応じているとのことでした。

多賀城市の取り組みは、宮城県地方税滞納整理機構のような強引な取立ではなく、納税できる市民を育成するという意味で、野洲市に親和性がありました。
ただし、市役所に相談に来なければ支援が開始しないこと、滞納税金を取り扱う収納課から支援につなげることは、地方税法22条との関係で難しいこと、予算の関係で専門スタッフが3名しか確保できず、専門スタッフの負担が過重になっていること、などの問題があり、現場でも万事がうまく進んでいるわけではないようでした。
しかし、全国会議としては、生活困窮者自立支援法の具体化として、極めて参考になる取り組みであるものとの認識を持ちました。

2 税金滞納処分対策茨城会議との共同シンポジウム

茨城県においては、一部事務組合である茨城租税債権管理機構が、強圧的な取立を行っているということで、平成30年12月16日、税金滞納処分対策茨城会議が結成されました。茨城県は、機構を設立して滞納処分を実効化するという取り組みを、全国で初めて実施した県でしたので、全国会議としては、問題事案を取り上げ、機構に対して改善の申し入れを行おうと思いました。
そこで、令和元年6月2日午後2時から、水戸市内にてシンポジウムを開催しました。参加者は、地元関係者、地方議員などを筆頭に、55名となりました。

現地からの開会の挨拶に始まり、茨城租税債権管理機構の違法取立の実情について、地元議員から報告がありました。報告された内容は、税滞納者を雇用していた新聞店主の営業所に、機構の職員ら総勢5名が押しかけ、4時間ほど粘られ、何らかの書面に署名をさせられたという事案でした。その後、新聞店主は機構に対し滞納税金の支払をさせられたという報告でした。

この新聞店主に対しては、地元議員2名が中心となってインタビューを行った様子が、映像として放映されました。新聞店主は、書面の内容についてはよく分からなかったけれども、帰ってくれるならよいと思って署名をしたものと述べていました。

次いで、特別講演として、野洲市の納税推進課の牧利昌氏から、「野洲市における庁内連携と納税推進課の役割」についてお話をいただきました。

牧氏によれば、同意書をとることにより、地方税法22条の問題を解消し、庁内連携にて、生活困窮者の自立を促しているとの報告がなされ、具体的な解決事例等が報告されました。一方で、野洲市においても、必ずしも一枚岩というわけではなく、支援をすべきとの判断をする部署と、市営住宅費の滞納に基づく明渡をすべきとの判断をする部署とが対立することもあるなど、現場での悩みなども報告されました。

いずれにしても、税滞納者から無理矢理取立をすることに対する、アンチテーゼとしての極めて衝撃的な報告でした。

また、全国会議としての活動報告においては、平成31年4月10日に、衆議院財務金融委員会で滞納処分問題について質疑をした、日本共産党の宮本徹議員の秘書であり、全国会議の会員でもある村髙芳樹氏からの報告がなされました。この質疑では、口座に入金されるのを待ち構えて、差押を行うことは不適切であるとの答弁が、国税庁及び総務省からなされておりますので、ご参考にしていただければと思います。

引き続いて、会場からの発言を受け付けました。会場からは、機構の特定の職員の態度が横柄であること、知識を持った民商や農民連などが介入すると解決はできるが、介入がなければ強引な取立が行われていることなど、機構の問題点が明らかにされました。

定刻である17時を15分程度超過して、シンポジウムは終わりました。

3 茨城租税債権管理機構との面会の不達成と県税務課との面会

元々の予定としては、翌6月3日に、機構に対し改善の申入れをするところでしたが、機構は、「これまでも応じていない」という理由で、面会を拒絶しました。これに対しては、全国会議からも地方議員からも要請を行ったのですが、実現はしませんでした。

そこで、代替的に県の税務課との懇談を行いました。当会議の役員及び地元議員や弁護士、商工団体など10名強で実施しました。

県の税務課では、県税である県民税の徴収を行いますが、実際は、県内各市町村に徴収事務を委託していることとなります。したがいまして、市町村が県民税を含めて取立をしていることとなり、その一部につき機構が取立を行っていることとなります。そうだとすれば、県民税の回収において、県民が過酷な状況に追いやられていることは問題となるはずです。

そこで、機構と県との関係を冒頭に確認したところ、県は、「機構は一部事務組合であり県が監督しうる立場ではない」との回答をしました。しかし、県は、機構に年間1700万円の資金を提供しています。資金を提供しているのに何も監督できないことなどあり得るのかと尋ねると、各市町村に委託している県税の回収にも寄与しているので資金は拠出しているが、機構に口を出す立場ではない、との回答を繰り返しました。

しかし、県知事は機構の設置について認可をしており、県は機構に年間1700万円もの資金を拠出し、機構に数名の職員を継続的に派遣しているのだから、全く監督権限がないはずがないのではないか、と確認をしても、監督しうる立場にはないとの回答は変わりませんでした。

そこで、全国会議からは、県税の取立を委託した市町村において、機構を通じた違法な取立がなされていても県は無関係なのかと確認したところ、明確に否定はなされませんでした。

以上から、機構の問題は、茨城県の無関心も大いに寄与しているものとの認識を深め、懇談を終えました。

機構が面談に応じない以上、今後は県知事等、別の角度から機構の取立の改善を求めていく必要があるものと痛感しました。

4 「滞納処分対策Q&A」の発行

既にみなさまには送付させていただきましたが、全国会議としては、実践的な内容の相談マニュアルを作成・頒布し、税滞納者の相談を広く受け付ける体制を構築することを一つの目標としてきました。
そこで、本年度は、このQ&Aを中心としたマニュアル作りに専念をいたしました。
このQ&Aの一番の売りは、関連条文や関連資料を、QRコード化して、ウェブ上で参照できるようにしたことにあります。これにより、冊子自体は薄く、内容は濃くすることができました。
初めての実践的なマニュアルということもあり、頒布開始からわずか3ヶ月で完売し、こういったマニュアルの需要の高さを改めて実感させられました。
全国会議としては、さらに、裁判例の動向や追加のQ&Aを加筆した改訂版の制作に取り掛かっておりますので、完成しましたら、また、会員の皆様にお届けさせていただきたいと考えております。

5 新型コロナウィルスに関する活動

令和2年1月より、全国的に深刻な被害を巻き起こしている、新型コロナウィルスに関連して、当会議では、外出自粛により売上が下がったり、勤務日数の減少により給料が下がったりして、税を納められない世帯が激増することが懸念されることから、新型コロナウィルス関連での国税及び地方税の特別な措置について情報収集をしました。

その中で、国税庁は、令和2年3月9日に、納税の猶予や換価の猶予につき、新型コロナウィルス由来で納税が困難となった場合の運用指針を示していることが判明したものの、地方税に関しては何らの解釈運用指針が示されていないことを察知しました。当会議は、設立当初から、特に地方税の強引な徴収への対応を主眼としてきたことから、地方税についても解釈運用指針が明確に示されるべきとの意見書を、滞納相談センターとの連名にてまとめ、同年3月16日、清水忠史衆議院議員及び村高秘書のお力を借りて、当会議の角谷代表、柴田副代表、滞納相談センターの大野税理士とで、総務省に対し、国税庁と同様の解釈運用指針を示すことを要請しました。

すると、その2日後である同月18日に、国税庁ほどの具体的な解釈運用指針ではありませんが、新型コロナウィルスに起因した納税困難者への配慮を求め、徴収の猶予及び換価の猶予の適用を促す指示文書が発出されました。

当会議は、その内容の周知を図るとともに、個別具体的な事案の救済方法について、いち早く公にする必要性から、ホームページに「新型コロナウィルス対策Q&A」を掲載しました(https://tainoutaisaku.zenkokukaigi.net/?p=246)。

また、同年4月30日、新型コロナウィルスの影響で収入が減少したことにより、納税が困難となった場合の新たな納税の猶予が国税、地方税について創設されましたが、この法案が検討されていた4月25日に、新たな納税の猶予を創設するまでもなく、従前から存在している納税の猶予の解釈で同様の納税の猶予が十分できることを指摘した公開質問状を国税庁に送付しました(https://tainoutaisaku.zenkokukaigi.net/?p=286)。

これに対し、国税庁は、口頭での回答をしてきましたが、その内容については疑問の残るものでしたので、今後は、新たな納税の猶予をさらに議論を深めていく必要があるものと認識しました。

今後の活動としては、新たな納税の猶予の制度は、令和3年1月31日までに納期の到来する税につき、1年間の猶予が認められるに過ぎないことから、同年2月1日以降は、新型コロナウィルスの影響が完全に払拭されるとは到底考えられない時期であるにもかかわらず、猶予を受けた税の納付と、令和3年2月1日以降が納期となる税との両方を納付しなければならなくなることを指摘し、新たな納税の猶予の対象期間の延長や、1年間の猶予を受けても納付できない場合の再延長について、従前の規定の解釈や新たな立法により手当をしていくよう、国税庁や総務省に働きかけていくこととなります。

6 その他の活動

上記のほか、令和元年8月に新潟で開催された生活保護問題議員研修会や、令和2年1月に東京で開催された、いのちと暮らしを守る税研修会にて分科会を担当するなどの活動も行いました。また、令和元年11月に埼玉で開催されたクレサラ被害者交流集会にブースを設けて広報活動もいたしました。
また、中央社会保障推進協議会が開催した平成31年2月3日の「国保滞納・差押え西日本ブロック学習交流集会」、令和元年10月22日の「国保都道府県単位化・滞納処分問題西日本学習集会」、及び同年12月22日の「国保、滞納・差押え東日本学習集会」に、相談実例や滞納処分対策Q&Aを用いた学習のため、講師派遣を行いました。
さらに、令和2年5月10日に急遽開催されることとなった「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る緊急学習会」の滞納税金に関するパートを担当しました。

7 みなさまへのお願い

さらに、滞納処分対策Q&AのQRコードのリンク先を、ホームページとしている関係で、ホームページを開設しております(https://tainoutaisaku.zenkokukaigi.net/)。前掲の新型コロナウィルス対応Q&Aもこちらに掲載してあります。
今後も、内容を充実させていきたいと思いますので、定期的な訪問と、みなさまのホームページ、フェイスブックなどとのリンクをお願いいたします。

8 今後の活動

今年度は、出口の見えない新型コロナウィルス対策に関する最新情報を、ホームページにて随時更新し、周知を図るとともに、国税庁及び総務省と、現行制度の解釈適用についての議論を進めていきたいと思います。
また、全国会議では、野洲市や多賀城市の方式を広めていく方針ですが、前橋市、さいたま市、宮城県地方税滞納整理機構及び茨城租税債権管理機構のような、これとは真逆の悪質な対応をしている自治体において集会を開催し、その上で当該自治体に改善を申し入れるという活動をしていきます。

そのためにも、全国各地の滞納税金問題を扱う税理士、弁護士、司法書士及び支援団体と連携をする必要がありますし、なによりも、この問題に関心を持っていただくことが必要不可欠です。是非、みなさまにも、この活動に参加していただき、運動を盛り上げていきましょう。

以上

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