令和3年 滞納処分対策全国会議活動報告

滞納処分対策全国会議 事務局長
弁護士 佐藤 靖祥

目次

1 リモート会議の活用

本年度も、昨年度から引き続き、新型コロナウイルスの拡大がとどまることを知らず、当会議の活動も制約される中での活動とならざるを得ませんでした。

当会議としても、昨年度から引き続き、zoomを利用したリモート会議を開催し、事務局会議及び総会については、すべてリモート会議を行いました。

とは言っても、事務局会議については、毎月1回のペースを維持して開催を継続しています。
事務局会議については、事務局でなくても広く参加していただけます。ご関心のある方、事案に関しての相談がある方など、会員のみなさまのご参加は大歓迎です。
会議参加のご案内は、その都度メーリングリストにて配信しておりますので、遠慮なくご参加ください。
なお、新型コロナウイルスに関する規制が徐々に撤廃されつつありますので、今年度こそは、問題のある自治体への申入を再開させたいとも考えております。つきましては、みなさまにおいて、問題のある対応をしている自治体を察知された際は、当会議宛に情報提供をしていただきますようお願いいたします。

2 総会における中村芳昭名誉教授の講演

令和3年5月11日に開催された当会議の総会に合わせて、米国の税徴収の制度について造詣の深い、中村芳昭青山学院大学名誉教授により、米国における納税者権利基本法及び徴収手続に関する具体的な権利保障制度についてのご解説をいただきました。

米国も、日本と同様、申告納税制度を原則としており、自主納付が原則であるところ、米国では、納税者の権利を保障するための基本法が制定されています。日本でも、国会で審議されはしたものの、成立を見ておらず、先進国の納税制度としては非常に遅れを取っていることが解説されました。もちろん、基本法は直ちに具体的な権利性を付与するものではないので、米国においても今後の実務運用に委ねられるものとなっているのが現状ですが、納税制度一般の法解釈の指針とはなりますので、日本でもかかる基本法の制定が必要と感じられました。

また、このような納税者の権利を具体化するものとして、米国では、徴収手続についても、日本では存在しない制度が具体化していることも解説されました。具体的には、差押や先取特権の設定に先立ち、少なくとも1回の聴聞の機会が与えられている制度や、納税者が差押等により経済的に困窮するおそれがあるなどの場合には、問題解決のための支援を受けることができる制度などが解説されました。後者については、年間24万件の申立があり、その

8割で支援が開始するなど、実効性を伴った制度となっているようです。
日本でも、「納税者の権利」という意識を醸成し、米国のような、徴収の場面においても民主的な解決手法が確立していくためには、まずは、納税者の権利保障に関する基本立法が必要と感じました。

3 令和3年税研集会分科会「滞納問題と対策」主催

1月に開催が予定されていた令和3年の税研集会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の見地から、5月に順延されて開催されました。開催方法は、会場とリモートを併用したハイブリッド方式でした。
当会議からは、角谷代表及び柴田副代表が会場参加をしました。
分科会では、まず、現職の国民健康保険料の徴収担当職員による特別報告がなされました。この報告では、問答無用の差押はもはや時代錯誤であり、効率的な徴収としては、広範な調査権を用いて、税滞納者が、「(経済的に困窮した)かわいそうな滞納者」なのか「(経済的には困窮してない)ずるい滞納者」なのかを見極め、前者に対しては滞納処分停止を含め、納税緩和措置を積極的に適用し、後者に対しては差押を容赦なく行うという実践例が示されました。その結果、当該自治体の全体の税滞納額の内、「かわいそうな滞納者」の納税義務は消滅、すなわち分母が減少するので、全体の税滞納率も減少するという具体的な効果も上がるとの説明でした。

まさに、広範な調査権限の適正な用い方の実践例を、現職の徴収担当者からご説明いただくという、本当に目からうろこが落ちる素晴らしい報告でした。
徴税吏員に与えられた広範な調査権を、かわいそうな滞納者から搾り取るために使うのではなく、納税緩和制度に導くために用いるという発想は、今後、各自治体のスタンダードとなるべきであるものと、強く認識させられた講演でした。

次に、角谷代表から、現実の相談事例から、相談対応時の注意点につき、具体的なお話をいただきました。給料等の差押にあたって、どの範囲の同居人を「生計を一にする親族」と判断するのかなど、具体的な解釈についてご説明いただきました。

さらに、地方税研究会の鈴木勇氏より、コロナ禍における地方税の納税緩和制度の適用状況を中心としたお話をいただきました。
鈴木氏からは、コロナ禍においては、換価の猶予等の要件を緩和して、できるだけ納税者の負担を軽減する方向で通知が出されているにもかかわらず、現実には、申請による換価の猶予、職権による換価の猶予などの適用例がごくわずかしかないという興味深い報告がなされました。コロナ禍において、納税者の生活実態を踏まえない徴収がなされているのだとすれば、それは大問題だと思いますので、そういった事例をお持ちの方には、是非ご報告をいただきたいと思いました。

これらの報告を受けた上で、討論を行いました。参加者の抱える様々な問題につき、角谷代表を中心に回答がなされ、非常に有意義な議論ができました。
令和3年の税研集会分科会の詳細については、角谷代表にレポートをまとめていただいたものを同封いたしますので、そちらでご確認ください。

4 令和4年税研集会分科会「滞納問題の現状と背景」主催

令和4年の税研集会は、1月29日、30日に開催されました。

当会議は、30日に開催された分科会「滞納問題の現状と背景」を主催させていただきました。令和4年税研集会も、会場とリモートの併用をしたハイブリッド方式で開催されました。
分科会では、全国商工団体連合会の宇野力氏から、「国保滞納の現状と背景事情」につき、ご報告いただきました。

全国商工団体連合会には、国保料(税)の滞納事案についての相談が数多く寄せられており、その中でも特に酷い取立がなされた案件についての事例報告に続き、国民健康保険制度の仕組が解説されました。国民健康保険の加入者だけが突出して平均年齢が高く、所得が低いという点についても、具体的な資料を用いて説明していただきました。
国民健康保険がこのような加入者層である以上、納付が困難な世帯が生じるのは、いわば論理必然です。にもかかわらず、国民健康保険においては、協会けんぽなどには存在しない均等割(当該世帯の加入者数に応じて賦課されるもの)が課されており、低所得世帯には厳しい制度となっていることも解説されました。もちろん、低所得世帯には、一定の減免制度があるとはいうものの、加入者層と賦課の方式を考慮すれば、滞納を生み出すことが必至の制度枠組みになっているということが、わかりやすく説明されました。

次いで、角谷代表により、滞納処分問題に関する現在の問題点をピックアップして報告していただきました。
分納をするなら1年間で完済せよと押しつけてくる自治体が後を絶ちませんが、これは、明らかに法令の解釈を曲解したものであることや、現行の納税の猶予(徴収の猶予)においては、コロナ禍により収入が減少した場合には、延滞税を免除する形での猶予を受けることができないという解釈がとられていることの問題点などが指摘されました。
これらの報告を受けて、参加者が抱える様々な疑問についての情報交換がなされました。

詳細は、角谷代表作成の、「第3分科会テーマ「滞納処分の現状と背景」のまとめ」を同封しましたので、こちらでご確認いただきたいのですが、国民健康保険以外の社会保険制度においても問題があることが提起された点が興味深かったです。具体的には、協会けんぽの場合の雇用主負担については、零細企業の場合には二重に保険料を支払っているのとほぼ同じになる問題や、健保組合の場合には、組合員の滞納を補填するために、他の組合員が拠出して制度を維持しなければならなくなるなど、それぞれの保険制度でも問題がないわけではないということが確認されました。
当会議としては、来年度の税研集会が、令和5年1月28日及び29日に予定されているので、引き続き、29日に開催される分科会を主催させていただき、参加者と情報交換を行っていきたいと考えております。メーリングリストにて参加案内を配布いたしますので、みなさまも是非ご参加いただきますようお願いいたします。

5 その他

令和3年度は、そのほかにも、クレサラ被害者交流集会の分科会「地方税の滞納処分、基礎知識とたたかいの到達点」に参加し、仲道事務局次長が、「滞納処分の基礎知識」との演題で講演を行いました(資料を添付しましたのでご確認ください)。

また、中央社会保障推進協議会が主催した国保学習交流集会において、令和3年5月の税研集会でご報告いただいた現職徴収担当職員に再登壇していただき、大変な好評をいただきました。
その他、全国クレサラ・生活債権問題対策協議会が主催する、zoomを用いた連続学習会につき、当会も共同主催者として、大阪社会保障推進協議会の寺内順子氏を講師に招き、「基礎から学ぶ国保」を企画・実行するなどしました。

また、増補改訂版「滞納処分対策Q&A」についても販売継続中です。ご入用の方は、ホームページからお申し込み下さい。
このように、当会議は引き続き様々な情報発信、情報交流を図っていきますので、みなさまのご協力をいただきますようお願いいたします。

以上

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