滞納処分対策全国会議 事務局長
弁護士 佐藤 靖祥
1 リモート会議の活用
本年度も、昨年度から引き続き、新型コロナウイルスの拡大がとどまることを知らず、当会議の活動も制約される中での活動とならざるを得ませんでした。
当会議としても、昨年度から引き続き、zoomを利用したリモート会議を開催し、事務局会議及び総会については、すべてリモート会議を行いました。
リモート会議については、会議の場所に足を運ばなくてもよいという意味で、移動の経済的、肉体的負担からは解放されますが、一方で、顔を合わせての会議ならではの、議論の雰囲気を直に感じながらの充実した議論や、他愛ない雑談から生まれる妙案などの機会が失われ、また、酒食をともにしながらの懇親の機会も設けられないことなど、必ずしも利点ばかりではないものと痛感させられた1年間となりました。
令和2年度の総会も、開催方法について協議を重ねた結果、例年よりも遅めの8月になってようやくリモート会議による開催にこぎ着けることができました。
総会では、活動方針や、役員人事などが決定された後、各地からの事例報告を行いました。1年2ヶ月ぶりの総会ではありましたが、コロナ禍においても、まだまだ解決していかなければならない課題が山積しているものと実感しました。一刻でも早く、コロナ禍から脱却をして、問題のある滞納処分の是正を求めていく活動をしていきたいと、気持ちを新たにした次第です。
2 国税庁との協議
問題のある滞納処分が行われている現場での活動が制約される中、当会議では、国税庁の一般的法解釈について、協議を重ねてきました。
具体的には、大きく分けて2つの方向での協議を申し入れました。
1つは、給料等の差押についての実務上の取扱についての協議、もう1つは、新型コロナ特例による猶予制度についての協議、です。
給料等の差押については、国税徴収法76条1項3号の「生計を一にする親族」の範囲についての実務上の取扱や、通勤手当などの実費補填の支給について差押禁止としないことの是非、家賃負担を考慮しない差押禁止の範囲の不当性、国税徴収法76条5項の超過取立の承諾は給与等の支給ごとに必要か、などにつき、令和2年10月8日、清水忠史衆議院議員の控室にて協議しました。
立法論に関わる部分もあり、現状ではいかんともしがたいとの回答もありましたが、特に超過取立の承諾については、支給1回ごとの承諾が必要なので、いつでも意思表示の撤回可能であるとの回答を得られたことは大きな成果だと思います(詳細は、角谷代表作成の、添付の「給料差押え実務の法解釈上の問題で国税庁と懇談」をご参照ください)。
今後は、超過取立の承諾書を差し入れている案件では、その納税額が生活実態に鑑みて不適切と考えられる場合には、撤回の意思表示をしていくべきと思います。
また、この協議の際に、コロナ特例による猶予制度に関する、当会議の意見をまとめた提案書を手交しました(内容は添付の「『コロナ特例猶予』の期限到来時以降に想定される滞納問題をめぐる事態への提案と、当会との懇談の申入れ」をご参照ください)。
コロナ特例による猶予は、1年間納税義務を先延ばしにするだけなので、1年以内にコロナ禍が収束していない限り、翌年度は、猶予された税と、新たに発生する税の2年分を納税しなければならなくなりますが、現状からも明らかなとおり、コロナ禍は、1年経過した現在でも終息には向かっていません。このことは、令和2年度中からも容易に予測できていたので、令和3年度にしわ寄せが来ることについて解消していく手段について提言し、これに基づいた協議を申し入れました。
こちらについては、令和2年11月12日に国税庁にて協議の場を設けることができました。詳細については、添付の角谷代表にご作成いただいた「11月12日国税庁と懇談、回答に進展なし~問題意識を国税庁に焼き付けたことは確か~」に記載の通りであり、なかなか国税庁の見解を変更することはできませんでしたが、既存の納税の猶予や換価の猶予、滞納処分の停止を弾力的に運用するとの回答を引き出せたという点では、成果があったものと考えております。
この、コロナ特例による猶予制度は、1年間の時限立法であり、園長がなされませんでしたので、今年度からは、2年分の税の納付に関する相談が増えることが見込まれます。その際には、既存の納税の猶予や換価の猶予、滞納処分の停止などを検討していく必要があろうかと思います。
3 滞納処分対策Q&Aの改訂
コロナ禍で思うように活動ができない中、コロナ特例による猶予など、新たな制度ができるなどしたため、令和3年2月、滞納処分対策Q&Aの増補改訂版を出版しました。
おかげさまで、令和元年11月に発行した初版は、わずか2ヶ月半で完売となりましたので、その後に寄せられた相談などを題材として、Q&Aも増強したものを発行することができました。
すでに会員のみなさまのお手元には届いていることとと思いますが、税関係については、年度により制度に変更があったり、みなさまの取組により、新たな解決手法が発見されたりすることがあるので、随時更新をして、時宜にかなった最新の情報をみなさまと共有していきたいと思います。
Q&Aの題材ともなりますので、みなさまのお手持ちの案件で困ったことがあれば、遠慮なくメーリングリストにてご相談いただければと思います。情報提供のほど、よろしくお願いいたします。
4 仙台地方裁判所での狙い撃ち差押事案に関する和解
最後になりましたが、当会議で支援をしてきた、宮城県地方税滞納整理機構が、要保護世帯の税滞納者の給料が預金口座に入金された直後に、預金残高全額を差し押さえた案件で、令和3年1月6日、和解が成立しました。
その詳細と関連資料は、滞納処分対策全国鍵のホームページに掲載されておりますので、そちらをご参照いただきたいと思いますが、この和解は、差押禁止債権を狙い撃ちして脱法的な差押をしないことの誓約がなされただけでなく、税滞納者の個別具体的な実情をふまえて行うことも約束されたことに大きな意義があると思います。
その反響も大きく、この和解を機に、日本弁護士連合会が「滞納処分に関する仙台地方裁判所における和解に対する会長談話」を、仙台弁護士会が「租税滞納処分に関する仙台地方裁判所における和解を受けて適切な徴収実務の実現を期待する会長声明」を発出するなど、各自治体において、不適切な滞納処分がなされていないか、見直しを促す動きが出てきました。
このような、一つ一つの事案の解決によって、全体的な動きを変えていくというきっかけとなるのではないかと思いますので、みなさまも各地でこういった資料を活用して、交渉を充実していただければと思います。
5 総括
本来であれば、仙台地方裁判所の和解などを受けて、仙台にて集会を開催し、宮城県地方税滞納整理機構との間で、今後のあるべき滞納処分について議論をしたいところではありますが、新型コロナウイルスは、依然として人類の脅威としてとどまっていることから、今のうちはできることをしっかりとやっていくしかありません。
みなさまの地域でも、問題のある滞納処分がありましたら、是非積極的にメーリングリストで情報共有をしていただきますようお願いいたします。
以上
