クレサラ被害者交流集会分科会の開催

当会議では、令和5年11月11日に開催される第42回全国クレサラ・生活債権問題被害者交流集会in東京に先立つ分科会を、令和5年10月23日(月)午後6時から8時までの時間帯で開催しました。

内容としては、「被害事例に学ぶ、滞納処分対策の具体的方法」というものであり、滞納処分に関する交渉の現場において、徴収する側がよく主張することを指摘した上で、その主張がどう誤っているのかについて、具体的な事例に即した報告を行いました。

最初に、当会議代表の角谷啓一税理士より、主に換価の猶予に関して、徴収する側がよく主張する事例を集めた報告がなされました。

例えば、分納可能額を示したとしても、「それではだめだ、1年以内に完納できる金額でなければ応じられない」などと言われることがよくあります。しかし、国税徴収法基本通達152-7には、「法第152条第1項の『それぞれの月において合理的かつ妥当なもの』とは、滞納者の財産の状況その他の事情からみて、滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にすることなく猶予期間内の各月において納付することができる金額であって、かつ、その猶予に係る国税を最短の期間で完納することができる金額をいう。」という形で、かかる主張とは真逆の対応をとるべきことが示されています。

角谷代表は、このような、徴収する側の誤解を正す論証を、具体的な事例を挙げながら説明しており、非常に参考になりました。角谷代表の資料をアップしますので、是非ご参照ください。

次に、私の方から、東京都下の自治体から、市県民税の滞納処分において、生活苦により納付ができなくなったところ、給料を差し押さえられた案件に即しての報告をいたしました。

この事案では、差し押さえされてしまう給料月額が6万円程度でしたが、税滞納者の個別具体的な生活実態を踏まえた徴収をすべきとの内容を示した総務省通知や、衆議院財務金融委員会における総務省の答弁などを示して、粘り強く交渉したところ、差押の範囲を納付可能額にまで減縮する形で解決がなされましたが、その交渉は、債務の整理と全く同じだということを報告しました。

最後に、仲道事務局次長より、給料が口座に振り込まれた直後に預金口座を差し押さえられた事例について報告がなされました。

かかる手法は、大阪高裁令和元年9月26日判決により、違法であるとの判断が示された後、国税庁が令和2年1月31日に、かかる手法は原則としてしてはならないとの通知を各税務署に発出していますから、基本的には許されない手法であることは明白です。仲道事務局次長は、これらの裁判例や通知などを示して粘り強く交渉を行い、事なきを得ましたが、このような報告を聞くにつれ、裁判例や通知を把握しておくことがいかに重要かということを改めて認識させられました。

その後、若干の意見交換を行い、分科会は無事終了しました。

滞納処分への対応は、債務の整理と同じであり、ただ、徴収をする側が、制度を正確に理解せずに闇雲に徴収を行うことがあるので、それに対抗する資料や根拠を示す必要がある、ということが確認された分科会でした。

事務局長 佐藤 靖祥

■角谷代表資料(PDFファイル)