インボイスに関する特別講演

当会議では、2023年5月29日総会を開催しました。

総会を記念して、冒頭に、⽥村貴昭衆議院議員秘書である、村高芳樹会員から、「インボイスで1,000万者が廃業・倒産の危機?」との演題にて、特別講演をしていただきました。(下記画像部分をクリックするとプレゼンファイルをPDF形式でご覧いただけます。)

ご存じの通り、インボイス制度は、本年10月より導入されることとなっていますが、最も影響を受けるのは、課税売上高が1000万円以下の免税事業者といわれています。免税事業者がインボイスに登録して課税事業者とならなければ、当該事業者から仕入をした事業者は、仕入税額控除を受けられないこととなります。そのため、免税事業者がインボイスに登録しないままでいると、いずれは他社との競争で排除されていってしまうという問題があります。

村高会員からの報告は、このような基本的な問題のみならず、その波及的効果まで言及がありました。

例えば、太陽光発電により売電をしている者、実質的には雇用されているように見えるものの契約形態が雇用であったり委託であったりする者などが、「登録が必要」などと説明され、登録することによる課税の問題についてきちんと理解しないまま登録してしまう例が後を絶たないことなどがあります。一方で、登録は必要ない、という前提としてしまえば、仕入税額控除ができない事業者は、電気料金やサービス料金に反映していくこととなりますので、値上がりに直結していき、国民生活に影響が生じていきます。

また、例えば駆け出しの声優や俳優などが、インボイスに登録しなければならないこととなると、消費税の納税により、実質的に1割の収入減となり、経済的に過酷となります。また、芸名を用いても本名や住所の登録が必要となりますから、インボイスの情報から個人情報が漏洩、拡散していくことも懸念されます。その結果、これらを目指す若者がいなくなり、文化芸術の衰退につながるおそれなども指摘されました。

さらに、インボイスに登録をしていないのに、適格請求書を発行する偽インボイスなどが横行するようになると、仕入税額控除をするにあたり、一つ一つ、登録の有無を確認しなければなりません。税務申告をする税理士の負担も激増することとなり、税理士報酬の増額をしていかなければならなくなります。

このような、単に免税事業者であった事業者の経済的負担に限られず、国民生活全体や、文化芸術など業界全体の衰退につながっていくおそれなどが指摘されたことについては、衝撃を受けました。

当会議としては、インボイスの導入により、消費税の滞納が増えていくことが懸念される中、そもそも、インボイスという制度を導入することの可否から検討されなければならないと考えさせられる講演でした。

事務局長 佐藤靖祥