令和4年10月21日、クレサラ被害者交流集会における分科会「滞納処分問題の実情と解決」を、リモート開催にて主催しました。
この分科会では、私、角谷代表及び仲道事務局次長が、それぞれの立場からの事例報告をいたしました。
私の方からは、滞納処分の解決に必要な知識としては、債務整理と同様の生活実態の把握とそれに基づく交渉であることを、実際に私が経験した事案を紹介しつつ説明させていただきました。クレサラ対協では、かつて、納税緩和制度に関する講義を行ったことがあるのですが、全く経験のない税法に関する分野であることから、興味、関心を十分に引くことはできませんでした。そこで、主にクレサラ対協の会員が参加するこの分科会においては、クレサラ対協が長年行ってきた債務整理のノウハウこそが、滞納処分問題でも生きてくるというお話をさせていただきました。
次に、角谷代表から、宮崎県で起きている、自治体職員が、税滞納者の営業用のカメラを、不在の時に自宅に入り込んで差し押さえたという事案についての経過報告がなされました。
この事案では、納税課で滞納税金の納付に関する相談をしようとしても、即納、短期完納を強要されるという相談にすらならない状況が続いている中で、自治体職員が突如自宅を訪問し、動産類を差し押さえたというものでした。
この事案を対応した角谷代表は、このような、税滞納者の生活実態を顧みない徴収姿勢の問題点を指摘しつつ、喫緊の課題として、営業用のカメラが公売に掛けられることを阻止すべく審査請求をしました。
営業用の資産については、国税徴収法75条1項5号において、差押禁止財産となる、との理屈で審査請求をしたところ、当然のことながら主張が認められ、無事カメラは戻りました。
今後は、分納交渉などを根気よく続けていくこととなりますが、このような、差押禁止財産を当たり前のように差し押さえるという自治体の対応を見ると、法制度をきちんと理解しないまま、回収一辺倒の徴収実務が横行していることに、憤りを感じると共に、もし、専門家に相談していなければどうなったことかという恐怖心も抱かざるを得ない報告でした。
最後に、仲道事務局次長からの成功事例が2件報告されました。
1件目は、住民票を分離して生活していた6人世帯の1名が、滞納処分による給料の差押を受けたという事案でした。この事案では、住民票通りの世帯として差押禁止の範囲を計算すると、15万円が差押禁止債権ではないこととなりますが、現実の同居親族6人として計算をすると、全額が差押禁止債権となる案件でした。
この事案では、住民票の分離をやめて6人世帯として再交渉をしたところ、差し押さえられた15万円が全額返金されたとのことでしたが、国税庁は、住民票が分離していても、同居して生計を一にしている親族数で計算するという実質的な評価をしていることからすると、形式的な住民票の単一性を求める自治体の運用は不適切と考えられます。
2件目は、同居の息子が滞納した国民健康保険料につき、母親の給料が差し押さえられた案件でした。国民健康保険料の納付義務は、世帯主にあることから、息子の滞納分につき、母親の財産が差し押さえられること自体は誤りではありませんが、国民健康保険に加入してもいない世帯主であっても納付義務があるという、そもそもの制度自体がおかしいといわざるを得ません。
この件については、仲道事務局次長は、息子は社会保険の加入資格があることを察知したため、遡って社会保険の被保険者としてもらうよう勤務先と交渉し、これが認められたことによって、国民健康保険料も遡って支払義務がなかったこととなり、事なきを得ました。延滞していた国民健康保険料を、そもそも発生していなかったこととするという解決方法には唸らされました。
三者がそれぞれの経験を報告することにより、参加者もイメージがつかめたのではないかと感じられる分科会でした。
それぞれの報告レジュメについてアップしておりますが、もし、参照したい資料があれば、私宛にご連絡いただきますようお願いいたします。
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