現職徴税吏員による講演

滞納処分対策全国会議 事務局長
弁護士 佐藤 靖祥

本年5月29日及び30日に、毎年1月に開催される税研集会が、2年ぶりに、会場参加とzoom参加のハイブリッド方式で開催されました。当会議は、30日に開催された、滞納対策の分科会を担当しました。
分科会では、現職の国民健康保険料の徴収担当職員による特別報告がなされました。この報告では、問答無用の差押はもはや時代錯誤であり、効率的な徴収としては、広範な調査権を用いて、税滞納者が、「(経済的に困窮した)かわいそうな滞納者」なのか「(経済的には困窮してない)ずるい滞納者」なのかを見極め、前者に対しては滞納処分停止を含め、納税緩和措置を積極的に適用し、後者に対しては差押を容赦なく行うという実践例が示されました。その結果、当該自治体の全体の税滞納額の内、「かわいそうな滞納者」の納税義務は消滅、すなわち分母が減少するので、全体の税滞納率も減少するという具体的な効果も上がるとの説明でした。
まさに、広範な調査権限の適正な用い方の実践例を、現職の徴収担当者から説明がなされており、本当に目からうろこが落ちる素晴らしい報告でした。
徴税吏員に与えられた広範な調査権を、かわいそうな滞納者から搾り取るために使うのではなく、納税緩和制度に導くために用いるという発想は、今後、各自治体のスタンダードとなるべきであるものと、強く認識をした講演でした。

以 上