中村教授による米国法と日本法の比較

滞納処分対策全国会議 事務局長
弁護士  佐藤 靖祥

本年5月11日、当会議の総会に合わせて、米国の税徴収の制度について造詣の深い、中村芳昭青山学院大学名誉教授により、米国における納税者権利基本法及び徴収手続に関する具体的な権利保障制度についてのご解説をいただきました。
米国も、日本と同様、申告納税制度を原則としており、自主納付が原則であるところ、米国では、納税者の権利を保障するための基本法が制定されています。日本でも、国会で審議されはしたものの、成立を見ておらず、先進国の納税制度としては非常に遅れを取っていることが解説されました。もちろん、基本法は直ちに具体的な権利性を付与するものではないので、米国においても今後の実務運用に委ねられるものとなっているのが現状ですが、納税制度一般の法解釈の指針とはなりますので、日本でもかかる基本法の制定が必要と感じられました。
また、このような納税者の権利を具体化するものとして、米国では、徴収手続についても、日本では存在しない制度が具体化していることも解説されました。具体的には、差押や先取特権の設定に先立ち、少なくとも1回の聴聞の機会が与えられている制度や、納税者が差押等により経済的に困窮するおそれがあるなどの場合には、問題解決のための支援を受けることができる制度などが解説されました。後者については、年間24万件の申立があり、その約8割で支援が開始するなど、実効性を伴った制度となっているようです。
日本でも、「納税者の権利」という意識を醸成し、米国のような、徴収の場面においても民主的な解決手法が確立されていくためには、まずは、納税者の権利保障に関する基本立法が必要と感じました。