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猶予の期間
地方税法15条の5
地方団体の長は、滞納者が次の各号のいずれかに該当すると認められる場合において、その者が当該地方団体に係る地方団体の徴収金の納付又は納入について誠実な意思を有すると認められるときは、その納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金(徴収の猶予又は第十五条の六第一項の規定による換価の猶予(以下この章において「申請による換価の猶予」という。)を受けているものを除く。)につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。ただし、その猶予の期間は、一年を超えることができない。
一 その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき。
二 その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る地方団体の徴収金及び最近において納付し、又は納入すべきこととなる他の地方団体の徴収金の徴収上有利であるとき。
徴収猶予の要件
地方税法15条4項 ~猶予期間の延長について~
地方団体の長は、徴収の猶予をした場合において、当該徴収の猶予をした期間内に当該徴収の猶予をした金額を納付し、又は納入することができないやむを得ない理由があると認めるときは、当該徴収の猶予を受けた者の申請に基づき、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につき徴収の猶予をした期間と合わせて二年を超えることができない。
納税の猶予等の取扱要領(平成27年3月:国税庁)
19……既に換価の猶予がされていた国税の取扱い
(1) 徴収法第151条第1項第1号と第2号の関係
徴収法第151条第1項第1号の規定による換価の猶予をした国税について、改めて同号の規定による換価の猶予をすることはできない。ただし、同号の規定による換価の猶予をした国税について、その猶予期間が終了した後、その滞納者が同項第2号に該当する場合は、同号の規定による換価の猶予をすることができる。
なお、徴収法第151条第1項第2号の規定による換価の猶予をした国税についても、同様である(徴基通第151条関係6-2)。
(2) 納税の猶予等との関係
納税の猶予又は申請による換価の猶予をした国税について、その猶予期間が終了した後、その滞納者が職権による換価の猶予の要件に該当するときは、職権による換価の猶予をすることができる。
「猶予制度の見直し」とは
平成26年度の税制改正において、納税環境整備の一環として猶予制度の見直しが行われ、国税においては平成27年4月、地方税においては平成28年4月の適用開始となりました。
見直しが行われる前から猶予制度がありました。主な猶予制度として、国税における納税の猶予(地方税の徴収猶予)及び換価の猶予制度(地方税も同じ)がそれです。しかしながら、①納税の猶予制度は、災害・病気・著しい事業上の損失などに対応する重要な制度であるが、該当事例が常時発生する制度でないこと、②換価の猶予は、頻繁・大量に該当事例が発生しますが、判断が税務署長等の裁量によることもあって、適用事例が極端に少なかったこと、③猶予の手続規定(分納の考え方を含め)なり、手続書類等の整備が不十分であったことなど、様々な問題がありました。
見直し前の猶予制度の実施状況を概括すると、国税においては換価の猶予などの法定猶予の適用は議実、延滞金の免除など面倒な作業が伴うこともあって、分納は認めても、法定猶予は適用しない、「事実上の猶予」(納付誓約)にとどまるというのが殆どでした。地方自治体においては、事実上、猶予はノータッチといっても過言でありませんでした。このように、事実上形骸化されていた猶予制度を見直し、思い切って法定猶予を立て直そうといった観点から、猶予制度の見直しが行われました。何が見直されたのか。
一番大きな見直しとして、これまでの職権型換価の猶予に加え、申請型換価の猶予ができたことです。ただ、申請猶予は「納期限から6か月以内の滞納」だけに適用されるもので、申請時に6か月を超える滞納があれば申請できないという、厳しい制約があります。とはいえ、一応、納税者の申請権が認められたという意味で、一歩前進といえます。職権猶予の場合には、該当要件を満たしていながら、行政が猶予を適用しないという不作為があったとしても、不服申立てもできませんでしたが、申請猶予では不服申立ができるようになりました。
第二は、猶予手続が法律、政令、規則等によって整備され(地方も同じ)、納税の猶予(徴収猶予)、申請の換価の猶予を申請するとき、職権の換価の猶予を申立てるときの諸諸手続きが明確化されました。具体的には、猶予申請書などの手続書類及び添付書類も明確にされ、これらの作成・提出を納税者に義務付ける一方、行政側は、提出する手続書類の作成指導及びその審査を行うことになり、そのための質問検査権も付与されました(納税の猶予の場合は通則法46条の2⑪など、換価の猶予の場合は徴収法141条)。また、猶予の手続きの中で、これまで曖昧さがあった「分納に対する考え方」(合理的かつ妥当なもの)等が明らかのなったことも、納税者の権利の前進として評価できます。
第三は、担保提供の条件の若干の緩和、猶予に伴う延滞金の免除制度の改善等が図られたことも、見直しに含まれます。
国税庁では、猶予制度の見直しを重視し、適用開始となる平成27年4月に向け、約半年かけて全徴収職員に対する研修を徹底し、滞納整理の基本原則は「滞納者の実情把握と、それに対し、的確に法律を適用すること」を指示しました。あわせて、猶予制度の見直しを機に、原則としてすべて法定猶予の適用を目指す方向を打ち出し、税理士会へも協力を求めました。そうした中で、見直し前と比べて、換価の猶予の処理件数が約10倍前進しています。これで十分という実施状況にはなっていません。
一方、地方自治体においては、「猶予制度の見直し」という認識が徹底されないまま今日に至っており、「市町村のうち95%が猶予未実施」という状況です。とりわけ、最も該当件数の多い職権の換価の猶予については、制度の存在すら認識すらされていないと言っても過言でありません。
納税の猶予等の取扱要領(平成27年3月:国税庁)
6の(3)……通常の納税の猶予をする期間等
(1) 猶予期間
通常の納税の猶予をする期間は、1年を限度として、納税者の財産の状況その他の事情からみて、その猶予に係る国税を完納することができると認められる最短期間とする(通基通第46条関係7)。
(2) 猶予期間の始期
猶予期間の始期は、納税の猶予申請書に記載された日とする。ただし、その日が猶予該当事実が生じた日より前であるなど、その日を始期とすることが適当ではないと認めるときは、別にその始期を指定することができる(通基通第46条関係8)。
(注)
1. 納税の猶予申請書に記載された日が猶予を受けようとする国税の法定納期限以前の日であるときは、当該法定納期限の翌日をその始期とする。
2.災害を受けた場合など、猶予該当事実の生じた日が明らかであると認められる場合には、その猶予該当事実が生じた日をその始期とすることができる(通基通第46条関係8また書き)。
(3) 合理的かつ妥当な金額による分割納付
通常の納税の猶予をする場合には、その猶予期間内において、その猶予に係る金額をその納税者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付させることができる(通則法第46条第4項)。
この場合において、「納税者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なもの」とは、納税者の財産の状況その他の事情からみて、納税者の事業の継続又は生活の維持を困難にすることなく猶予期間内の各月において納付することができる金額であって、かつ、その猶予に係る国税を最短で完納することができる金額をいう(通基通第46条関係13-6)。
国税徴収法基本通達152-7(合理的かつ妥当な金額)
法第152条第1項(地方税法15条3項)の「それぞれの月において合理的かつ妥当なもの」とは、滞納者の財産の状況その他の事情からみて、滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にすることなく猶予期間内の各月において納付することができる金額であって、かつ、その猶予に係る国税を最短の期間で完納することができる金額をいう。