Q25. 大地震で被災、復旧のための借入金の返済が苦しい 

徴収猶予の要件等

地方税法15条(1項1号) 地方団体の長は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合において、その該当する事実に基づき、納税者又は特別徴収義務者が当該地方団体に係る地方団体の徴収金を一時に納付し、又は納入することができないと認められるときは、その納付し、又は納入することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。

一 納税者又は特別徴収義務者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかったとき。

二 納税者若しくは特別徴収義務者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき。

三 納税者又は特別徴収義務者がその事業を廃止し、又は休止したとき。

四 納税者又は特別徴収義務者がその事業につき著しい損失を受けたとき。

五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたとき。

納税の猶予等の取扱要領(平成27年3月:国税庁)

5の(2)のロの(イ)……通常の納税の猶予をする金額

(1) 通常の納税の猶予をする金額及びその調査

通常の納税の猶予をする金額は、下記(2)により調査した猶予該当事実に基づく支出又は損失(以下「猶予該当支出等」という。)の合計額(下記63から66まで《現在納付能力調査》に定める現在納付能力調査によって判定した納付困難と認められる金額がその金額を下回る場合には、その納付困難と認められる金額)を限度とする。このため、納税の猶予の申請があった場合には、調査日現在の状況に基づいて猶予該当支出等を把握するための調査を行う。ただし、調査日現在における調査が困難である場合には、臨場等による調査の日の状況から、適宜その調査日現在の猶予該当支出等を算定して差し支えない。
なお、猶予該当支出等の調査に当たり、納税者が帳簿等を備えていない場合又は帳簿等による調査が困難である場合には、納税者からの聞き取りを中心に調査する等適宜な方法によって判定して差し支えない。

(2) 猶予該当支出等の範囲

イ 共通事項

(イ) 猶予該当支出等は、原則として、猶予該当事実が発生した日から調査日までの期間におけるものを認めるものとする。

(ロ) 下記ロ《猶予該当事実ごとの猶予該当支出等の範囲》に掲げるもののほか、猶予該当事実(上記4(3)《猶予該当事実》ヘに掲げるものを除く。)があったことにより、事業等の全部又は一部の休廃止を余儀なくされた場合には、その休廃止に伴い減少したと認められる利益の額に相当する金額を猶予該当支出等として認めて差し支えない。この場合においては、下記ロにより、猶予該当事実ごとに掲げている個々の資金の支出又は損失の額と重複して計算することのないよう留意する。

(ハ) 猶予該当支出等のうち、通則法第46条第2項各号の二以上に該当するものがある場合には、猶予金額及び延滞税の免除額を勘案し、それぞれの猶予該当支出等として重複しないように計算する。

(ニ) 猶予該当支出等に対応するものとして、調査日までに受領した保険金、補償金、賠償金等がある場合には、その受領した金額を猶予該当支出等から控除する。ただし、納税者が請求することができる保険金、補償金、賠償金等で、調査日までに受領していないものについて、調査日後これらを受領する見込みのある場合には、下記67から70まで《見込納付能力調査》の見込納付能力調査における資金収支見込みにおいて、特別収入見込みに加算することとし、猶予該当支出等からは控除しないものとする。

(ホ) 調査の結果、猶予該当支出等がある場合には、その資金の額が上記4(4)《猶予該当事実と納付困難との関係》の納付困難の原因となっているものとする。
なお、猶予該当事実があった後、例えば、事業の継続又は生活の維持のために必要と認められない投資、資産の購入等のための支出があり、その支出額が異常に多額である場合等、最近において猶予該当支出等と相反する使途の支出があることが明らかであって、かつ、猶予該当支出等の範囲内の金額につき納税の猶予をすることが徴収上著しい支障があると認められる場合を除き、猶予該当支出等と相反する使途の支出を考慮することなく猶予該当支出等を計算して差し支えない。

ロ 猶予該当事実ごとの猶予該当支出等の範囲

猶予該当支出等として認容する範囲は次のとおりとする。

(イ) 納税者が、その財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難に遭った場合
上記4(3)《猶予該当事実》イに掲げる事実があった場合の猶予該当支出等は、災害又は盗難に基づく現実の損失の額の合計額とし、その金額は、次により計算する。

A 災害又は盗難に遭った財産が事業用資産のうちの流動資産である場合には、その災害又は盗難による損失の額、例えば、商品については、災害を受けた商品の災害時における再調達価額又は製造原価に相当する金額とする。ただし、調査対象商品が膨大である等のため、これにより難い場合には、災害又は盗難に遭った時期に近接する時期における財務諸表等に計上されている価額を参考として計算して差し支えない。

B 災害又は盗難に遭った財産が事業用資産のうちの固定資産又は非事業用資産(生活の維持のために通常必要と認められないものを除く。)である場合には、その財産を災害又は盗難直前の状況に回復するために必要な復旧費の金額又は災害、盗難に遭った財産に相当する代替財産(経済的効用において災害、盗難に遭った財産に代わるものを含む。)を取得するために調査日までに支出した金額及び調査日後支出する見込みの金額のうち、申請に係る納税の猶予の期間中に支出される見込みの金額とする。
なお、納税者が復旧等の意思を有し、具体的な復旧計画が立てられる場合には、徴収上の支障のない限り、その総額につき認めて差し支えない。

C 災害又は盗難に基づいて出費を余儀なくされるもの、例えば、災害を受けた財産の取壊費用、整理費及び消防費等の出費がある場合には、間接的な損失の額として認めるものとする。

D 猶予該当事実が調査日から1年以上前に生じており、それに伴って、調査日から1年以上前に現実に支出した金額があるときは、その金額が借入れによって調達されたことが確認される場合であって、かつ、その借入金が調査日前1年内に返済され、又は調査日後に返済され若しくは返済される見込みである場合に限り、その返済された、又は返済される見込みの金額だけを認めるものとする。

(ロ)~(へ)   ~略~

納税の猶予等の取扱要領(平成27年3月:国税庁)

37……税額の一部が納税の猶予に該当しない場合の取扱い

通常の納税の猶予の申請に係る国税につき、納税の猶予の要件及び納税の猶予をする金額について調査した結果、申請に係る税額の一部について納税の猶予を認めることができる場合には、申請に係る税額の全額についての納付見込みを検討することとし、納税者が納税の猶予に該当しない部分の税額の納税につき誠実な意思を有すると認められるときは、納税の猶予に該当しない部分の税額については、申請による換価の猶予又は職権による換価の猶予(徴収法第151条第1項第1号又は第2号)の適用を検討する。
なお、納税者から、これらの国税について納付があった場合には、換価の猶予に係る国税から納付があったものとする。

分納は「合理的かつ妥当な金額」であるべき

地方税法15条3項

地方団体の長は、前二項の規定による徴収の猶予(以下この章において「徴収の猶予」という。)をする場合には、当該徴収の猶予に係る地方団体の徴収金の納付又は納入について、当該地方団体の条例で定めるところにより、当該徴収の猶予をする金額を当該徴収の猶予をする期間内において、当該徴収の猶予を受ける者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付し、又は納入させることができる。

納税の猶予等の取扱要領(平成27年3月:国税庁)

6の(3)……通常の納税の猶予をする期間等

(1) 猶予期間

通常の納税の猶予をする期間は、1年を限度として、納税者の財産の状況その他の事情からみて、その猶予に係る国税を完納することができると認められる最短期間とする(通基通第46条関係7)。

(2) 猶予期間の始期

猶予期間の始期は、納税の猶予申請書に記載された日とする。ただし、その日が猶予該当事実が生じた日より前であるなど、その日を始期とすることが適当ではないと認めるときは、別にその始期を指定することができる(通基通第46条関係8)。

(注)
1. 納税の猶予申請書に記載された日が猶予を受けようとする国税の法定納期限以前の日であるときは、当該法定納期限の翌日をその始期とする。
2. 災害を受けた場合など、猶予該当事実の生じた日が明らかであると認められる場合には、その猶予該当事実が生じた日をその始期とすることができる(通基通第46条関係8また書き)。

(3) 合理的かつ妥当な金額による分割納付

通常の納税の猶予をする場合には、その猶予期間内において、その猶予に係る金額をその納税者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付させることができる(通則法第46条第4項)。
この場合において、「納税者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なもの」とは、納税者の財産の状況その他の事情からみて、納税者の事業の継続又は生活の維持を困難にすることなく猶予期間内の各月において納付することができる金額であって、かつ、その猶予に係る国税を最短で完納することができる金額をいう(通基通第46条関係13-6)。