コラム:特別法によって差押が禁止されている主な財産

納税者が税金を納期限までに納付しなかった場合には、徴収法に基づき、納税者の財産に対して滞納処分が行われますが、その滞納処分の第一段階として行われるのが差押えです。滞納処分による差押えは、滞納者の財産について、法律上又は事実上の処分を禁止し、それを換価できる状態におく強制的な処分のことです。しかし、すべての財産について差押えができるわけではありません。滞納者及び滞納者と生計を一にする親族の最低生活の保障、滞納者の最低限度の生業の維持及び精神的生活の安寧の尊重を図るために、差押えが禁止されている財産があります。それを下記に列挙しておきます。

国民健康保険法67条

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

健康保険法61条

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

生活保護法58条

被保護者は、既に給与を受けた保護金品及び進学準備給付金又はこれらを受ける権利を差し押さえられることがない。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律13条
自立支援給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

児童福祉法57条の5

1 租税その他の公課は、この法律により支給を受けた金品を標準として、これを課することができない。
2 小児慢性特定疾病医療費、障害児通所給付費等及び障害児入所給付費等を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
3 前項に規定するもののほか、この法律による支給金品は、既に支給を受けたものであるとないとにかかわらず、これを差し押さえることができない。

児童手当法15条

児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

児童扶養手当法24条

手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

母子保健法24条

第二十条の規定により金品の支給を受けることとなつた者の当該支給を受ける権利は、差し押えることができない。

高齢者の医療の確保に関する法律62条

後期高齢者医療給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

雇用保険法11条

失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

介護保険法25条

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

労働基準法83条2項

補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。

労働者災害補償保険法12条の5第2項

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を独立行政法人福祉医療機構法(平成十四年法律第百六十六号)の定めるところにより独立行政法人福祉医療機構に担保に供する場合は、この限りでない。

自動車損害賠償保障法18条

第十六条第一項及び前条第一項の規定による請求権は、差し押えることができない。

自動車損害賠償保障法74条

第七十二条第一項の規定による請求権は、差し押えることができない。

刑事補償法22条

補償の請求権は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない。補償払渡の請求権も、同様である。

犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律17条
犯罪被害者等給付金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

公害健康被害の補償等に関する法律16条

補償給付の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

原子力損害の賠償に関する法律9条3項

責任保険契約の保険金請求権は、これを譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、被害者が損害賠償請求権に関し差し押える場合は、この限りでない。

保険法22条3項

責任保険契約に基づき保険給付を請求する権利は、譲り渡し、質権の目的とし、又は差し押さえることができない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 第一項の損害賠償請求権を有する者に譲り渡し、又は当該損害賠償請求権に関して差し押さえる場合
二 前項の規定により被保険者が保険給付を請求する権利を行使することができる場合

「差押禁止財産の範囲及び差押えの登記又は登録を嘱託する場合の関係機関について」(昭和58年7月13日付国税庁長官通達微徴4-2(例規))別表1
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/chosyu/830713/01.htm